
至善館にて、ソーシャルイノベーションとビジネスの融合を目指す実践家たちの集い「Impact Night」が開催されました。今回は、iLEAPの創設者であり、著書『The Soil of Leadership(邦訳:百姓の道)』の著者であるブリット・ヤマモト(Britt Yamamoto)氏をゲストに迎え、リーダーシップの本質と持続可能性について深める一夜となりました。
「Who are you?」
ブリット・ヤマモト氏のセッションは、参加者への問いかけから始まりました。
「Who are you?(あなたは誰ですか?)」
ブリット氏は、参加者に紙とペンを持たせ、自分の役割やアイデンティティを1番から15番までリストアップするよう促しました。「学生」「CEO」「親」「テニスプレイヤー」など、肩書きだけでなく多面的な自分自身を書き出し、それを基に参加者同士が自己紹介を行いました。
このワークショップの狙いは、単なる職業的役割を超えた「人間としてのつながり」を感じること、そしてリーダーシップにおいて自分が何者であるかを認識することが基盤となることを体験することにありました。会場は一気に打ち解け、活気のある雰囲気が生まれました。
土壌を育てるリーダーシップ(The Hyakusho Way)
ブリット氏は、自身のルーツである熊本県での農業体験を基に、リーダーシップの革新的なメタファーを提示しました。
- 「百姓(Hyakusho)」の概念: 百の姓(名字/役割)、つまり百のスキルを持つ人々。ルネサンス・マンのように多才で、生きる力に溢れた存在としての「百姓」を再定義しました。
- 慣行農法 vs 持続可能な農法:
- 慣行農法(Conventional Farming): 植物(Plants)を育てることに集中する。化学肥料などの外部投入に依存し、短期的成果を求める。
- 持続可能な農法(Sustainable Farming): **土壌(Soil)**を育てることに集中する。健康な土壌があれば、植物は自ずと育つ。
ブリット氏は、現代のリーダーシップは「植物(成果や数字)」を育てることに固執しすぎており、その結果、リーダー自身やチームが疲弊(Burnout)していると指摘しました。真のリーダーシップとは、組織やコミュニティという「土壌」を豊かにし、人々が自律的に成長できる環境(Condition)を整えることであると語りました。
実践知としての「土壌」作り
続いて、NPO法人SALASUSU 共同代表の青木健太氏と至善館学生で、サステナビリティ・コンサルティングに従事するSuhaasuさん、スタンフォード・ソーシャルイノベーションレビュー日本版コーディネーターのエリクセン恵さんも交えて の対談が行われました。
青木氏は、19歳でNPOを起業し成功を収めた後、「自分は何者か」を見失いかけた経験を共有しました。米国シアトルで行われていたブリット氏のプログラムに参加し、自分の弱さ(Vulnerability)をさらけ出すこと、そして「休耕(Fallow)」の期間を持つことの重要性を学んだと語りました。
- 教育現場との共通点: 青木氏は現在取り組んでいる教育事業においても、「知識を教え込む(植物をいじる)」のではなく、「子どもたちが安心して学び合える環境(土壌)を作る」ことこそが重要だと共鳴しました。
- リーダー像の変容: 「強いリーダー」である必要はなく、自分の弱さを認め、等身大の自分でいることが、結果として周囲のリーダーシップを引き出すことにつながると述べました。
セッションの最後には、ブリット氏の新刊『The Soil of Leadership』の紹介があり、リーダーシップとは単なるスキルセットではなく、生き方そのものであるというメッセージが送られました。
会場では、参加者同士が「自分は何者か(Who are you?)」という問いを深め合いながら、遅くまで熱心なネットワーキングが行われました。まさに「土壌」が耕され、新たなつながりの種が蒔かれた一夜となりました。



