【開催レポート】Impact Night:障害当事者がリードするイノベーションと社会変革 ―インクルージョン・インパクトの実践例
2025年12月10日
お知らせ
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国際障害者デーの12月3日(水)、至善館では、ソーシャルインパクトとビジネスの融合を探求するセミクローズドイベント「Impact Night」を開催いたしました。

 

今回は、笹川平和財団(SPF)との連携により、アジア太平洋地域で活躍する社会起業家を招き、従来の「障害者支援=チャリティ」という文脈ではなく、イノベーションとテクノロジーを通じて、障害のある人々が経済活動にフルに参加し、社会を変革する主体となることの重要性が語られました。

 

モデレーターは、本学の特任准教授であり、株式会社Zebras and Companyの共同創業者でもある田淵良敬が務めました。

 

ベトナム発、インクルーシブなビジネスモデル
グエン・ティ・ヴァン 氏(Imagtor 創業者 / ベトナム)

脊髄性筋萎縮症の当事者でもあるヴァン氏は、ベトナムで画像編集などのITアウトソーシングを行うソーシャルベンチャー「Imagtor」を経営しています。彼女は、「障害者のとらえ方を変える」ことをミッションに掲げ、障害を持つ人々に公正な賃金とトレーニングの機会を提供しています。チャリティに頼るのではなく、高品質なサービスを提供することでビジネスとして自立し、経済的価値を生み出す姿勢に参加者は強く心を動かされました。

 

社会インフラへと進化した手話ビジネス
大木 洵人 氏(ShuR 代表)

「才能は普遍的だが、アクセスはそうではない」と語る大木氏は、聴覚障害者と聴者の間にある情報の壁を取り除くための遠隔手話通訳サービス「VRI(Video Remote Interpretation)」の開発経緯を共有しました。
2008年、まだスマートフォンが普及していない時代にスタートアップとして始まったこの挑戦は、現在では銀行や自治体などの「社会インフラ」として機能しています。大木氏は、テクノロジーはあくまでツールであり、重要なのはそれを社会に実装するためのガバナンスや法律(手話言語条例など)の整備であると強調。ビジネスとソーシャルベネフィットを融合させた「ハイブリッドモデル」の重要性を説きました。

 

 

リードコメンテーター
笠柳 大輔 氏(認定NPO法人DPI日本会議 / 至善館MBA生)

シャルコー・マリー・トゥース病の当事者であり、障害者の権利擁護を行うDPI日本会議で政策提言に携わる笠柳氏は、現在、至善館のMBAプログラム(2年次)に在籍しています。リードコメンテーターとして登壇し、登壇者のプレゼンテーションを踏まえ、障害者としての自身の経験について語りました。「民間企業で働くのではなく、自身の経験をレバレッジして社会構造を変えたい」という想いからNPOでの活動を選択した笠柳氏。車椅子ユーザーとしての実体験に基づき、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化を推進しています。

 

 

パネルディスカッション:会場一体となった熱気ある対話

イベント後半のパネルディスカッションでは、「AI技術と人間の役割」「企業との対等なパートナーシップ」「リーダーとしてのマインドセットの変革」といった多岐にわたるテーマについて、登壇者と参加者が垣根を超えて議論を展開しました。単なる質疑応答の枠にとどまらず、障害を「克服すべき課題」ではなく「イノベーションの源泉」と捉え直す前向きなエネルギーが会場全体を包み込みました。ビジネスとソーシャルインパクトの両立を真剣に模索する至善館らしい、熱く建設的な対話の場となりました。

会場には、至善館の在校生、卒業生、そして社会変革に関心を持つ学外の参加者が集い、セッション終了後も登壇者を囲んで熱心なネットワーキングが行われました。

 

 

至善館は今後も、多様なセクターを繋ぎ、社会にポジティブなインパクトを生み出すための対話の場を提供し続けていきます。

 

 

 

Impact Night

至善館のインパクト・エコノミーセンターが主催するイベントで、至善館副学長・インパクトエコノミーセンター長の鵜尾雅隆教授が主催。起業家や政府・金融機関のリーダー、社会的インパクトの創出を志す人々が集まり、知識や知見を共有する場を提供し、インパクトを生み出すエコシステムをつくりあげることを目指したセミオープンイベントです。

 

 

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