栗島正和奨学金は、故・栗島正和氏の想いと意志を体現するような、未来のリーダー人財の育成を目指して、有志による寄付のもと設立されました。今年8月に入学をした、栗島正和奨学生第2号の大植寿二郎さんにお話しを伺いました。 |
− まずは、自己紹介をお願いします。
大植と申します。新卒から川崎汽船株式会社という外航海運業を営む会社に勤めています。会社の主な事業は船舶を使った貿易物資輸送ですが、私自身は、営業担当を経験した後に、経営企画や人事など管理部門を長く担当してきました。
− なぜ至善館に出願しようと思ったのですか?
経営企画部門にいたときに、会社や経営について深く考える機会がありました。どんな船種に投資をしたら会社は成長し続けるのだろうか。一方で、貨物輸送によって社会インフラを支えるという使命がある。利益追及だけが会社の判断基準ではないはず、では、何を基準に判断を下せばいいのだろうか、と答えのない問いを考え続けておりました。当時、主流だったアメリカ型の株主資本主義には違和感がありました。会社は何のために存在しているのか、どこかに答えがあるのではないか、それを見つけたいと思っていました。
また、普段仕事をする中でも、社員がもっと楽しく、成長を実感しながら充実した気持ちで働ける環境とはなんだろうか、とずっと問い続けてきました。私は今、育成担当なので、企業価値向上を考える力を養成する7週間に渡るゼミ形式の社内研修を3年前に設計しました。すでに8期まで開催しています。企業価値を高める力を身につけることを目的としており、財務的観点から企業価値を客観的に測りつつ、非財務的と言いますか、そもそも企業価値を高める事業とは何だろうか、についてゼミ生で議論し考えるような場を作りたかったのです。
ただ、そのような活動を続ける中で、当の自分には、どんな事業をすすめるべきかを考え、判断する基準や知識や視座を持ち合わせていないことに気が付きました。ゼミ生が自らの業務をよりどころにして新しい事業を考えているのを目の当たりにして、自らを振り返ったときに、ルーティンをこなすだけで、新しいインプットがなく、自分の成長が止まってしまっているのではないか、と焦りました。
そんなときに、至善館の教員で、当社の社員研修を担当している野呂先生からお声がけいただき、至善館のことを知りました。
至善館が西洋と東洋の橋渡しをしながら教育を提供し、新しい経営の在り方を模索しようとしていることに、非常に惹かれました。会社の経営を行う上では数字だけではうまくいかないだろうという漠然とした問題意識は持っていましたが、至善館なら、自分の問題意識をさらに深め、企業価値を高めていく力が身につくのではと思い、出願しました。
− 至善館に出願するに際して、一番課題だったことは何ですか?
正直に申し上げると、やはり授業料でした。ただ、これも野呂さんからお声がけいただいたのですが、栗島正和奨学金という特別な奨学金プログラムがあって、企業の中で経営を変えていく人材に向けた奨学金制度だと伺いました。募集要項を読めば読むほど、自分にその器はないかも・・、と思いました。ただ、今回はどうしても学びたいという気持ちが勝り、応募いたしました。
− 栗島正和奨学金が授与されると聞いて、どのように思いましたか?
栗島さんの思いを受け継げられるよう、周囲にも助けてもらいながら学びを深めていきたいと思っています。海運業は古い業界なので、変革には時間がかかると思いますが、サステナビリティや環境に配慮した事業を取り込みながら、ものを運ぶことで、社会の持続可能な発展に貢献するような仕事をしたいと思っていますし、社内でも地球を守ることを考えられるような環境をつくることを、改めて肝に銘じたいと思っています。
− これからの2年間の抱負をお聞かせください。
今は人事部門にいるので、社員育成を考え、研修プログラムをつくる機会が多いです。卒業を待たずとも、至善館での学びをどんどん自分の仕事に活かしていき、他のスタッフも自分が至善館で学ぶ新しい知識や視座で物事が見られるように、社内で機会を広げていきたいです。そして、ゆくゆくは、至善館での学びをきっかけに会社にいい影響をもたらせられるような人材になりたいと思っています。
明治時代を生きた著名な方がフランス留学中に「私が一日休むと、日本の発展が一日遅れます」と言ったと聞いたことがありますが、本当に大げさに言えば、今はそんな気持ちで、至善館でできる限り多くのものを学びたいと思っています。
あと、この場を借りて、私が至善館で学ぶことに協力してくれている家族や同僚に感謝を伝えたいです。家族には、以前から、チャンスがあれば本格的に経営を学びたい、と話していて、まさに至善館が自分が探していた場所だと説明したら、妻も子供も快く送り出してくれました。
会社の同僚には、自分の成長には至善館での学びが必要で、授業に参加するために仕事を調整しなければならないことを話し、協力をお願いしました。講義日程は同僚にはすべて公開しており、大変さを理解して協力してくれております。周囲の協力なしには、2年間の学びは成し遂げられないので、本当に感謝しても感謝し切れません。
そして何より今回至善館で学ぶ機会を与えてくださった、栗島正和奨学金の寄附者のみなさまに心より感謝申し上げます。
(2024年10月15日)
【参考リンク】
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