東京、4月7日ーオックスフォード大学サイード・ビジネススクールの名誉教授であるコリン・メイヤー氏が、「Reimagining Capitalism: Solutions for a World in Crisis and Japan in Transition.(資本主義の再構築:危機に直面する世界と変革期の日本にとっての解決策)」と題した講演を行いました。メイヤー教授は、パーパス経営の世界的権威で、コーポレート・ガバナンスの分野において世界で最も影響力のあるオピニオンリーダーの一人として、21世紀における企業経営のあり方、株式会社の概念に一石を投じました。講演の中でメイヤー教授は、これまで資本主義を支えてきた株主第一主義の考え方に異議を唱え、企業は単に株主利益の最大化を追求するのではなく、「人と地球の課題を、利益を上げながら解決する」という広い目的を持つべきだと主張しました。
メイヤー教授によれば、私たちが直面している世界的な危機(気候変動、格差の拡大、制度に対する不信感など)は、社会・自然資本よりも金融資本を優先してきた資本主義というシステムに原因がある、資本主義を再構築するとは、企業を「目的を持った存在」として再定義し、長期にわたる社会的目標と調和したかたちでガバナンスや資金調達を設計し直すことを意味する、と主張します。取締役会、投資家、規制当局といったステークホルダーも、この変革に積極的に関与し、企業が「害を及ぼすことなく利益を上げる」仕組みづくりに貢献する必要があると強調しました。
講演では、世界中の先端事例を紹介しながら、日本企業が長年培ってきたステークホルダー重視の経営が、再構築された資本主義のロールモデルとなり得ると、述べました。
メイヤー教授は、日本がこのグローバルな変革の先頭に立つユニークな立場にあるとし、地域社会を大切にする経営文化と、社会的・環境的責任への意識の高まりを融合させることで、日本はより包摂的で持続可能な資本主義モデルを築くチャンスがあると述べました。具体的には、企業統治の改革、株式持ち合いの解消、外国人機関投資家の増加、アクティブな機関投資家や買収市場の活性化といった、日本独自の改革案を提示しました。
メイヤー教授の講演を受けて、「日本資本主義の父」として知られる渋沢栄一氏の玄孫にあたる渋澤健氏が登壇しました。メイヤー教授の考えと渋沢栄一氏の思想には共通点があると述べ、両者は、異なる価値観をビジネスに統合することの重要性を強調しており、持続可能な繁栄と平和構築のモデルを目指している、と強調しました。また、資本主義は放棄する対象ではなく、資本主義の仕組みを利用しつつ、責任ある倫理的な経済活動を通じて、我々はより良い世界を目指すことができる、と主張しました。
講演後には質疑応答セッションが行われ、至善館学長の野田智義教授がモデレートし、約90名の対面参加者、約300名のオンライン参加者とともに活発な意見交換が行われました。
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