【至善館フォーラム(GOFP*との共同開催)】
『世界秩序形成の行き詰まりを打開する東洋思想』
2021年5月15日(土)午前10:00〜12:00 (JST)
スピーカー: Steven K. Vogel(カリフォルニア大学バークレー校 教授)
瀬口清之(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
モデレーター:北神圭朗
言語:英語(同時通訳あり)
*GOFP: The Global Order Framework Project
近年、グローバル化の進展に伴う各国間の利害対立の先鋭化と、発展途上国の国際社会でのプレゼンスの高まりを背景に、国家間の意見調整が一段と難しくなり、国連、G7、WTO等国際機関や国際的な枠組みの機能不全が続いている。こうした世界秩序形成の行き詰まりの根本的な原因は、主権国家間の合意に基づいて世界共通のルールを制定することを前提としていることによるものである。
各国において正統性を有する政府機関は、その国の選挙権を有する国民のために存在し、国民全体の利益を最優先することが責務となる。このため、各国政府機関は国際協力のために短期的な自国の利益の主張を抑えて、国際協力に貢献することを選ぶことは少ない。これは国内政治の正統性を前提に、グローバル化時代の国際的合意形成を図る仕組みが構造的な欠陥に直面していることを示している。
その欠陥を克服する方法として、次の2つのアイデアを提示する。
第1に、主権国家が担う役割の一部を、民間組織non-state actors(大学、研究機関、シンクタンク、NPO、個人等)が補う。グローバル社会おける重要課題の分野別に、世界的に信頼される複数(または1つ)の専門家集団が、客観的なデータと科学的根拠に基づいて、世界共通の課題に対する問題解決策を提示する。
第2に、世界統一基準のルール、およびそれに伴う罰則規定を定めず、国家、地方政府、企業等が、専門家集団によって示された問題解決策の中から、自国に適した政策メニューを選び、モラルに基づいて自発的な問題解決を目指す。
この枠組みの実現のためには、目に見える外形基準を分析する科学を重視する西洋の発想の土台の上に、目に見えない自己の内面を自ら問い続ける東洋の精神文化を融合させることが必要である。 |
Steven K. Vogel
カリフォルニア大学バークレー校アジア研究ニュー・イール・ハン特別教授、政治学部教授。米国における日本の政治経済研究の第一人者。主な著書に、Marketcraft: How Governments Make Markets Work (2018)、Japan Remodeled: How Government and Industry Are Reforming Japanese Capitalism (2006)、Freer Markets, More Rules: Regulatory Reform in Advanced Industrial Countries (1996)。
瀬口清之
一般財団法人 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹。主な研究対象は、中国経済と米中日関係。1982年日本銀行入行。2006年から2008年、日本銀行北京事務所長。2010年に日中間のビジネスをサポートするコンサルティング会社 Asia Bridge Corporation設立。2019年より、一般財団法人 日本アジア共同体文化協力機構 理事。